2025年(令和7年)4月1日から全ての貨物軽自動車運送事業者は、貨物軽自動車安全管理者の選任と届出が義務化されました。
安全運行の責任者として、営業所ごとに1名の安全管理者を配置する必要があります。他の営業所との兼任はできません。
このページでは、貨物軽自動車安全管理者の選任と届出について、手続きの流れまで詳しく説明しています。
貨物軽自動車安全管理者の選任
貨物軽自動車安全管理者の選任要件
貨物軽自動車安全管理者として選任できるのは、次のいずれかの要件を満たしている方です。
- 講習修了者:選任の日前2年以内に「安全管理者講習」を修了している
- 定期講習修了者:安全管理者講習の修了かつ安全管理者定期講習を選任の日前2年以内に修了している
- 一般貨物自動車運送事業の運行管理者として選任されている
バイク便事業者は対象外
バイク便事業者には貨物軽自動車安全管理者の選任義務はありません。
貨物軽自動車安全管理者の選任義務の対象は、「四輪以上の軽自動車を使用して貨物を運送する事業者」に限定されています。
貨物軽自動車安全管理者の兼任の禁止
貨物軽自動車安全管理者の選任タイミング
貨物軽自動車運送事業の経営届出を行った後、速やかに選任します。
選任したら、貨物軽自動車安全管理者の選任を遅滞なく運輸支局等に届出しなければなりません。
個人事業主の場合の貨物軽自動車安全管理者の選任
一人で事業を行なっている個人事業主の場合は、自分自身を貨物軽自動車安全管理者として選任します。
貨物軽自動車運送事業者は、貨物軽自動車安全管理者の選任時には、遅滞なく運輸支局等に届出しなければなりません。
貨物軽自動車安全管理者の届出の概要
届出の流れ
- ステップ1経営届出貨物軽自動車運送事業の開始届出を提出
- ステップ2安全管理者の選任営業所ごとに1名を選任
(同一人物の複数営業所兼任は不可) - ステップ3届出書の提出運輸支局等へ「選任・変更・解任届出書」を提出
届出に必要な書類
- 届出書(2部):国交省の様式例を使用(控え用に1部返却されます)
- 講習修了証の写し:講習・定期講習の修了証明書を添付
- 本人情報:氏名、生年月日、営業所名・所在地、兼職の有無など
提出方法とタイミング
項目 | 内容 |
---|---|
提出先 | 管轄の運輸支局、運輸監理部、陸運事務所など |
提出方法 | 郵送・対面(電子届出の導入予定あり) |
提出時期 | 貨物軽自動車安全管理者の選任後、遅滞なく届出 |
届出書の基本構成
個人事業の選任届出の記入例
項目 | 記入例 |
---|---|
届出者の氏名・住所 | 山田 太郎(やまだ たろう) 神奈川県川崎市川崎区〇〇町1-2-3 |
営業所名・所在地 | 同上 同上 |
電話番号・メール | 044-123-4567 yamada@example.com |
安全管理者氏名・生年月日 | 山田 太郎(やまだ たろう) (昭和60年4月1日生) |
選任日 | 令和7年4月1日 |
登録講習機関名 | 自動車事故対策機構(NASVA) |
講習修了日・修了番号 | 令和7年3月15日 123456 |
兼職の有無 | 無し(○で囲む) |
添付書類 | 講習修了証明書の写し (定期講習も受講済ならその修了証明書も) |
法人の選任届出の記入例
項目 | 記入例 |
---|---|
法人名・住所 | 川崎運送株式会社(かわさきうんそうかぶしきがいしゃ) 神奈川県川崎市川崎区〇〇町1-2-3 |
代表者氏名 | 代表取締役 山田 太郎 |
営業所名・所在地 | 川崎営業所 神奈川県川崎市川崎区〇〇町1-2-4 |
電話番号・メール | 044-123-4567 yamada@example.co.jp |
安全管理者氏名・生年月日 | 山田 太郎(やまだ たろう) (昭和60年4月1日生) |
選任日 | 令和7年4月1日 |
登録講習機関名 | 自動車事故対策機構(NASVA) |
講習修了日・修了番号 | 令和7年3月15日 123456 |
兼職の有無 | 無し(○で囲む) |
添付書類 | 講習修了証明書の写し (定期講習も受講済ならその修了証明書も) |
補足ポイント
- 法人名は登記上の正式名称を記載
- 代表者氏名は肩書き付きで記載(例:代表取締役)
- 営業所が複数ある場合は、営業所ごとに1名ずつ選任・届出が必要
- 兼職の有無は必ず記載
兼職有の場合はその職名及び職務内容を記載
提出ステップの全体像
- ステップ1講習の修了選任予定者が講習を受講し、修了証を取得
- ステップ2届出書の作成国交省様式に基づき、必要事項を記入
- ステップ3添付書類の準備修了証明書などの写しを添付
- ステップ4提出先の確認管轄の運輸支局・陸運事務所など
- ステップ5提出方法の選択郵送または窓口持参
(電子届出は準備中) - ステップ6控えの受領・保管受付印付きの控えを受け取り保管
提出時の注意点
- 選任後、遅滞なく(できるだけ早く)届出が必要
- 営業所ごとに1名ずつ選任・届出(兼任不可)
届出の様式の入手先
貨物軽自動車安全管理者の届出の様式の例が、参考様式として国土交通省ホームページに掲載されています。
>> 国土交通省『貨物軽自動車安全管理者の選任・変更・解任届出様式例』
管轄の運輸支局から様式の指定がある場合もあります。管轄の運輸支局にご確認ください。
既存の貨物軽自動車運送事業者に対する経過措置
2025年(令和7年)3月31日以前に貨物軽自動車運送事業経営届出を行なった事業者については、以下の猶予期間が設けられます。
- 貨物軽自動車安全管理者の選任:施行後2年(2027年(令和9年)3月31日まで)
2025年(令和7年)4月以降に貨物軽自動車運送事業経営届出を行なう事業者は、事業を開始する前に選任する必要があります。
貨物軽自動車安全管理者の役割
貨物軽自動車安全管理者は、運行の安全の確保のために必要な事項に関する知識を身に付けた上で、事業用貨物軽自動車の運行の安全の確保に関する業務を管理する者です。
貨物軽自動車安全管理者は、事業者に課せられている義務のうち、次に掲げる業務を行ないます。
- 運転者が休憩又は睡眠のために利用することができる施設を適切に管理すること。
- 定められた勤務時間及び乗務時間の基準の範囲内において乗務割を作成し、これに従い運転者を事業用自動車に乗務させること。
- 酒気を帯びた状態にある運転者を事業用自動車の運行の業務に従事させないこと。
- 運転者の健康状態の把握に努め、疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全に運行の業務を遂行できないおそれがある運転者を事業用自動車の運行の業務に従事させないこと。
- 過積載による運送の防止について、運転者に対する指導及び監督を行うこと。
- 貨物の積載方法について、運転者に対する指導及び監督を行うこと。
- 運転者に対して点呼を行い、報告を求め、確認し、指示を与え、その内容を記録して保存すること。また、運転者に対して使用するアルコール検知器を常時有効に保持すること。
- 事業用自動車に係る運転者の業務について、運転者に対して記録させ、その記録を保存すること。
- 事業用自動車に係る事故が発生した場合には、必要な事項を記録し、保存すること。
- 貨物軽自動車運転者等台帳を作成し、営業所に備え置くこと。
- 運転者に対する指導、監督及び特別な指導を行うとともに、記録し、保存すること。
- 運転者に適性診断を受けさせること。
- 異常気象その他の理由により輸送の安全の確保に支障を生ずるおそれがあるときは、運転者に対する適切な指示その他輸送の安全を確保するために必要な措置を講ずること。
- 国土交通大臣又は地方運輸局長から事故防止対策に関する通知があった際は、事業用自動車の運行の安全の確保について、運転者に対する指導及び監督を行うこと。