運行管理補助者は全体の3分の2の点呼をすることができます。
運行管理補助者とは
運行管理補助者とは、その名の通り一般貨物自動車運送事業の運行管理において、運行管理者を補助する人のことです。
しかし、なんでも代わりにできるのかというとそうではありません。補助者がなにができてなにができないのかはルールで明確に決まっているのです。
運行管理補助者の権限・業務
『貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について』には運行管理補助者について以下のように記載されています。
補助者の権限
第18条 運行管理者等の選任
(略)
4.補助者は、運行管理者の履行補助を行う者であって、代理業務を行える者ではない。
ただし、第7条の点呼に関する業務については、その一部を補助者が行うことができるものとする。(『貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について』より)
つまり、運行管理補助者は基本的には一人で運行管理の仕事をすることはできません。あくまで運行管理者がいることが前提で、そのサポートをすることが仕事です。
その中で、「点呼実施」のみ「単独で」実施することが可能と書いてあります。
しかし、点呼の際に酒気帯びや睡眠不足などなにも問題が無い場合は良いとしても、問題がある場合は補助者では判断することができません。
同じ解釈及び運用の中に書いてある内容を見てみましょう。
第18条 運行管理者等の選任
(略)
5.補助者が行う補助業務は、運行管理者の指導及び監督のもと行われるものであり、補助者が行うその業務において、以下に該当するおそれがあることが確認された場合には、直ちに運行管理者に報告を行い、運行の可否の決定等について指示を仰ぎ、その結果に基づき各運転者に対し指示を行わなければならない。
イ.運転者が酒気を帯びている
ロ.疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができない
ハ.無免許運転、大型自動車等無資格運転
ニ.過積載運行
ホ.最高速度違反行為(『貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について』より)
つまり、運行管理者が休んでいる場合でも、点呼時になにか問題があった場合は携帯電話・IT機器などで連絡が取れるようにしておく必要があるわけです。
特に乗務前点呼を補助者が代行する場合、イとロのケースがあり得るパターンでしょう。
このような問題が出てきた場合、補助者はどうすればいいのでしょうか?
運行管理補助者による点呼の流れ
点呼結果で問題が無ければドライバーは業務開始してよいでしょう。
しかし、点呼で問題がある場合は補助者が判断をすることはできません。必ず運行管理者に判断を仰ぐ必要があります。
もしアルコールが検知されてしまったら?
社内ルールにて「1回目のアルコール検知で検出された場合、30分後にもう一度検査」等が制定されていればそのルールに基づき、再度検知した上で呼気からアルコールが検知されなければ業務開始で良いでしょう。しかし、再度検知されたら運行管理者に判断を仰ぐ必要があります。
運行管理者補助者は3分の2まで点呼可能
運行管理補助者は3分の2まで点呼ができるというのは多くの方がご存知かと思います。
さて、それは30日のうち20日というように1日単位なのでしょうか?
それとも単純に述べ回数の3分の2まで大丈夫なのでしょうか?
回数単位で考えるのが正解です。
つまり、10人のドライバーの乗務前と乗務後の2回、つまり延べ20回の点呼の場合。
たとえば朝だけ10人全員について運行管理者が乗務前点呼し、帰庫時の乗務後点呼は全て補助者が実施するという形態も問題ありません。
1日単位と考えると使い勝手が悪いですが、そのように柔軟に活用することで運行管理者の負担を減らすことができます。
運行管理補助者に必要な資格
整備管理補助者は誰でもなることができますが、運行管理補助者は誰でもなれるわけではありません。
運行管理者基礎講習の修了者もしくは運行管理者資格者証を持っている人だけが選任することができます。
基礎講習はどこで受けられるの?
NASVA(自動車事故対策機構)で実施される基礎講習が一般的です。
https://www.nasva.go.jp/fusegu/mng_kaijo.html
その他、国土交通省が認定した事業者においても受講が可能です。
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03safety/dispatcher.html
※この中の講習認定機関一覧で「貨物(基礎講習)」と書いてある事業者です。
運行管理補助者を選任するために必要な手続き
貨物自動車運送事業法輸送安全規則の第21条にはこのように定められています。
(運行管理規程)
第二十一条 一般貨物自動車運送事業者等は、運行管理者の職務及び権限、統括運行管理者を選任しなければならない営業所にあってはその職務及び権限並びに事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務の処理基準に関する規程(以下「運行管理規程」という。)を定めなければならない。2 前項の運行管理規程に定める運行管理者の権限は、少なくとも前条に規定する業務を処理するに足りるものでなければならない。
分かりやすく書くと、「補助者を選任する場合には、補助者の選任方法及び職務並びに遵守事項等について明記しておくこと」
よく「運行管理補助者を選任したので選任届を出したい」という方がいますが、一般貨物自動車運送事業では補助者について、運輸支局に届け出る必要はありません。(ちなみに貸切バスの場合は必要です)
しかしなにもしなくていいわけではありません。
なにをすれば良いか解説していきましょう。
運行管理規程への記載と事務所内掲示
トラック協会の冊子やインターネットからダウンロードしたものには以下のように記載があります。
従って、補助者を選任した場合には「運行管理補助者:鈴木太郎」のように事務所に掲示すれば済むわけです。
もし自社の運行管理規程にこのような記載がない場合は、追記する必要があります。
運行管理規程の抜粋
・管理者の補助者(以下「補助者」という。)は、管理者が不在等のため業務を行うことができない場合に、管理者の指示により運行管理業務の補助を行うものとする。
・選任した補助者の氏名を社内の見易い箇所に掲示して周知徹底するものとする。
・(管理者と補助者との関係)
第5条 管理者は、補助者に対して補助させる運行管理業務の範囲及びその執行方法を明確に指示するものとする。
2 補助者は、運行管理者の指導及び監督のもとに、次の各号に掲げる事項について該当するおそれがあることが確認された場合には、ただちに運行管理者に報告し、運行の可否の決定等について指示を受け、その結果に基づき各運転者に対し指示するものとする。
(1) 運転者が酒気を帯びている
(2) 疾病、疲労その他の理由により安全運転をすることができない
(3) 無免許運転、大型自動車等無資格運転
(4) 過積載運行
(5) 最高速度違反行為
3 管理者は、補助者の行った運行管理業務を把握し、その処理した事項の責任を負うものとする。
4 管理者は、補助者に対する指導及び監督を行うものとする。
その他
旅客事業との兼任、他営業所との兼任
同じ営業所であれば、旅客事業としての補助者と一般貨物の補助者を一人が兼任しても大丈夫です。
また、一般貨物事業の中であれば、他の営業所の補助者も兼任して大丈夫です。
ただし、その場合には各営業所において、運行管理業務が適切に遂行できるよう運行管理規程に運行管理体制等について明記し、その体制を整えておくことが必要です。
運行管理補助者は2年に一度の運行管理一般講習を受けないといけないか
補助者は一般講習を受ける義務はありません。運行管理者が受けた際にその内容をしっかりと指導することで足ります。
補助者を5年務めたら運行管理者になれるのか
運行管理者資格を得るためには5年の実務だけでなく、一般講習を毎年1回を4年間受ける必要があります。