トラック運転者の労働条件を改善するため、厚生労働省は「トラック運転者の労働時間等の改善基準」を定めています。
(出典:厚生労働省ホームページ『トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント』)
トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイントとは
トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイントは5つあります。
ポイント1:拘束時間・休息時間
(1)拘束時間
拘束時間とは始業時刻から終業時刻までの時間で、労働時間と休憩時間(仮眠時間を含みます)の合計時間をいいます。
(2)休息期間
休息時間とは勤務と次の勤務の間の時間で、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、労働者にとって全く自由な時間をいいます。
※労働時間には、時間外労働時間と休日労働時間が含まれます。その時間数・日数をできるだけ少なくして、改善基準告示に定める拘束時間内の運行、休息期間の確保することが求められます。
ポイント2:拘束時間の限度=休息時間の確保
(1)1箇月の拘束時間
- 1箇月の拘束時間は原則として293時間が限度です。
- ただし、毎月の拘束時間の限度を定める書面による労使協定(※)を締結した場合には、1年のうち6箇月までは、1年間の拘束時間が3,516時間(293時間×12箇月)を超えない範囲において、1箇月の拘束時間を320時間まで延長することができます。
※労使協定(ろうしきょうてい):労働者と使用者との間での約束事のことを言います。労使協定は書面によらなければなりません。
(2)1日の拘束時間と休息時間
- 1日(始業時刻から起算して24時間をいいます。以下同じ。)の拘束時間は13時間以内を基本とします。これを延長する場合であっても16時間が限度です。ただし、(4)の制限があります。
- 1日の休息期間は継続8時間以上必要です。
1日とは始業時刻から起算して24時間をいいます。
1日(24時間)=拘束時間(16時間以内)+休息期間(8時間以上)です。
(3)拘束時間・休息期間の計算方法
- 1箇月の拘束時間が改善基準告示を満たしているかどうかは、1箇月間の各勤務の拘束時間(始業時刻から終業時刻まで)をそのまま合計してチェックします。
- 1日の拘束時間が改善基準告示を満たしているかどうかは、始業時刻から起算した24時間以内の拘束時間によりチェックします。
(4)1週間における1日の拘束時間延長の回数の限度
1日の拘束時間を原則13時間から延長する場合であっても、15時間を超える回数は1週間につき2回までとされています。このため、休息期間が9時間未満となる回数も1週間につき最大で2回までです。
片道拘束15時間を超える長距離の往復運送は1週につき1回しかできません。
(5)休息期間の取り扱い
休息期間については、運転者の住所地での休息期間が、それ以外の場所での休息期間より長くなるようにします。
(6)休日の取扱い
休日は、休息期間+24時間の連続した時間とすることが必要です。ただし、いかなる場合であっても、この時間が30時間を下回ってはなりません。
休息期間は原則として8時間確保されなければなりません。休日は、「休息期間8時間+24時間=32時間」以上の連続した時間となります。また、後述の「ポイント5、特例」の(3)隔日勤務の場合、20時間以上の休息期間が確保されなければならないので、休日は、「休息期間20時間+24時間=44時間」以上の連続した時間となります。よって、これらの時間数に達しないものは休日として取り扱われません。
後述の「ポイント5:特例」の(1)分割休息期間、(2)2人乗務の特例、(4)フェリーに乗船する場合の特例については、休息期間に24時間を加算しても30時間に満たない場合がありますが、この場合でも、30時間以上の連続した時間を与えなければ休日として取り扱われません。
ポイント3:運転時間の限度
(1)1日の運転時間の限度
1日の運転時間は2日(始業時刻から48時間をいいます。以下同じ。)平均で9時間が限度です。
(2)1週間の運転時間の限度
1週間の運転時間は2週間ごとの平均で44時間が限度です。
時間外労働及び休日労働を行う場合には、労働基準法第36条第1項に基づく時間外労働及び休日労働に関する協定届を労働基準監督署へ届け出なければなりません。
(3)連続運転時間の限度
連続運転時間は4時間が限度です。
運転開始後4時間以内又は4時間経過直後に運転を中断して30分以上の休憩等を確保するようにしてください。
ポイント4:時間外労働及び休日労働の限度
(1)時間外労働及び休日労働の拘束時間の限度
時間外労働及び休日労働は1日の最大拘束時間(16時間)、1箇月の拘束時間(原則293時間、労使協定があるときはポイント2(1)の条件の下で320時間まで)が限度です。
(2)休日労働の限度
ポイント5:特例
(1)休息期間分割
業務の必要上、勤務の終了後継続した8時間以上の休息期間を与えることが困難な場合には、当分の間、一定期間(原則として2週間から4週間程度)における全勤務回数の2分の1の回数を限度として、休息期間を拘束時間の途中及び拘束時間の経過直後に分割して与えることができます。
この場合、分割された休息期間は、1日において1回当たり継続4時間以上、合計10時間以上としなければなりません。
(2)2人乗務
運転者が同時に1台の自動車に2人以上乗務する場合(ただし、車両内に身体を伸ばして休息することができる設備がある場合に限る。)においては、1日の最大拘束時間を20時間まで延長でき、また、休息期間を4時間まで短縮できます。
(3)隔日勤務
業務の必要上やむを得ない場合には、当分の間、次の条件の下に隔日勤務に就かせることができます。
- 2暦日における拘束時間は、21時間を超えないこと。
ただし、事業場内仮眠施設又は使用者が確保した同種の施設において、夜間に4時間以上の仮眠時間を与える場合には、2週間について3回を限度に、この2暦日における拘束時間を24時間まで延長することができます。
この場合においても、2週間における総拘束時間は126時間を超えることはできません。 - 勤務終了後、継続20時間以上の休息期間を与えること。
(4)フェリー乗船
運転者が勤務の中途においてフェリーに乗船する場合には、フェリー乗船時間のうち2時間(フェリー乗船時間が2時間未満の場合には、その時間)については拘束時間として取り扱い、その他の時間については休息期間として取り扱います。
フェリー乗船時間が2時間を超える場合には、上記により休息期間とされた時間を休息期間8時間(2人乗務の場合4時間、隔日勤務の場合20時間)から減じることができます。
ただし、その場合においても、減算後の休息期間は、2人乗務の場合を除き、フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの間の時間の2分の1を下回ってはなりません。
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